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コーヒー おいしさの方程式を読んで

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今回ご紹介する本は、NHK出版の『コーヒーおいしさの方程式』田口 護氏、旦部幸博氏 著です。

自家焙煎珈琲店の老舗の「カフェ・バッハ」の田口氏の長年の経験から導き出された美味しさの正体と、珈琲の研究者にしてウェブサイト「百珈苑」の主宰者の旦部氏の科学的な知見から導き出された美味しさの正体について、両者の視点から書かれており、文系の人にも理系の人にも読みやすい内容になっています。

コーヒーの美味しさに関する知識がコレでもかというほど盛り込まれており、自家焙煎店を目指すプロの方から、自宅で焙煎して自家消費している方、カフェ巡りやお家コーヒーを趣味としているコーヒー好きにまで読んでもらいたい1冊となっております。

本書の構成は「コーヒー豆の基礎知識」「コーヒーの焙煎」「抽出の科学」の3部構成となっており、それぞれのシーンでどのように味が形成されていくかが記載されています。

生豆選び

コーヒーの基礎知識では、コーヒーの品種による違いや各国で行われている精製での味の変化などに触れられており、もし自分の好みがハッキリしている人であれば、どういったコーヒー豆を選べば失敗しないかが分かると思います。
コーヒーは焙煎によって味は大きく変化しますが、それでもその豆が持っているポテンシャルの範囲内でしか変化しません。そもそものポテンシャルとしてどういった香味を持っているかは「産地」「標高」「精製」などによって違いがあることが示されており、どのような特徴があるかが分かるので、生豆選びにとても重宝します。

焙煎による味の形成

コーヒーの焙煎では、焙煎時にどのような成分がどのタイミングで生成されて、どのように味に影響するかが書かれており、焙煎時に気をつける点や目指したい味を実現するためのコツが分かります。
生豆のポテンシャルを最大限活かすためにはどれぐらいの温度帯でどの成分を増やしてどの成分を減らせばよいかがチャートになっており、視覚的にも学ぶことができます。
私自身も焙煎している身なので大変興味深く読ませていただきましたが、科学的な根拠はあくまで理論なので、簡単に焙煎で実現できるかと言うとそうではないと感じました。
科学的根拠から傾向を掴み意識しながら焙煎することはもちろん大切ですが、個々の豆の特徴をよく知りそれを味として表現するには経験も大切だと感じています。知識と経験が合わさって初めて目指す味が実現するのではないかと思っております。

抽出の科学

今までもコーヒーの教則本は多く出版されており、どのような抽出をすれば苦味が出やすいとか酸味が豊かになるとか、ハウトゥーを学ぶことはできていました。本書ではさらにそこから1歩踏み込んで、図説などを踏まえながら説明されているので、より分かりやすいと思いました。
また、大前提として完璧な抽出方法などないとした上で、よいコーヒーとわるいコーヒーに分けて、抽出を説明している。どんなコーヒーを美味しいと感じるかは人それぞれなので、正解のやり方としないのがコーヒー好きの心をくすぐってくれる。

本書を勧める理由

私が本書を勧める理由としては大きく2点ある。
まず味作りをしている人に向けた理由。味作りとは、抽出はもちろん、焙煎や精製に携わっている人全般にあたる。
味作りをする上で、もちろん目指す味がないと作り上げるのは難しいと思うが、その目指す味を実現させるために必要な知識が本書には詰まっています。ただ経験を積んで目標の味を目指すより、知識を武器に理論的にアプローチすることで効率的に実現することができるだろう。
ただ、本書はあくまで方程式なので実用しないことには意味がないと思う。

2点目にコーヒーを飲む専門の人にも読んでもらいたい。
これまで感覚で飲んで美味しい美味しくないと判断していた人も、感じた味をどの様に表現すればよいか、その味の裏付けはなんなのかが分かるので、よりコーヒーを深く楽しむことができると思うのだ。
表現が豊かになればそれだけ味にも敏感になれると思う。

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